380万円が3分で消えた話 ─ FX指標発表での全損(30代男性・本人とのやり取り)
M.Tさん(30代男性・都内会社員)が経験した、米雇用統計の発表で深夜の口座が空になるまでの3分間。
妻に打ち明けるまで半年かかった、ロスカットの届かない急変動の記録。
M.Tさん(仮名・30代男性・都内会社員)から届いた話。FXの米雇用統計発表で、3分で380万円が消えた経緯。妻に打ち明けるまで半年かかったという。
管理人としては、自分も近い時間帯に近い通貨ペアでヒヤリとした経験があるので、あの瞬間の動けなさは、よくわかる。
残業帰りの30分が、唯一のトレード時間だった
M.Tさんが取引していたのは、いつも夜23時から24時の間の30分。会社からの帰り道、自宅マンションのエレベーターに乗る前に、いつも口座残高を見る習慣がついていた。
平日の昼間は仕事で画面を見られない。夜だけが、自分の判断で動かせる時間だった。
FXを始めたきっかけは、4年前の社内の先輩からの一言。「副業でFXやってる人、意外と多いよ」。最初の半年で40万円ほどプラスになった時期があり、自信もついていた。
米雇用統計を狙う、決まりきった戦略
M.Tさんが使っていた戦略は、毎月第1金曜日の22時30分に発表される米雇用統計を狙うもの。発表前にUSD/JPYのロングを建て、結果が良ければ握り、悪ければ即決済する方針だった。
当時の証拠金は300万円。レバレッジは25倍で運用していた。建てていたロットは75枚(USD/JPY 75万通貨)。証拠金維持率はちょうど100%付近、ロスカットラインは-150pipsの設定だった。
21時30分にポジション形成完了。残り1時間は、ニュースを眺めながら待った。
22時30分00秒、結果が予想を大きく下回る
発表の瞬間、画面のレートが止まった。
レートが動き始めたのは、その2秒後だった。
22時30分02秒から30秒の間に、USD/JPYは-200pipsの方向へ走った。M.Tさんが設定していたロスカット-150pipsは、すでに通り過ぎている水準だった。
ところが、ロスカットは発動していなかった。
スリッページという言葉を、その夜に覚えた
画面を更新するたび、レートはさらに下方向へ進んでいた。証拠金維持率の表示が、見たことのない値になっていた。
22時33分、ロスカットが約定した。指定した-150pipsよりも、はるかに下のレートで。実質的なスリッページは-350pips近かったという。
口座残高は3万円台になっていた。
後日、追証として約75万円の入金請求が届いた。
証拠金の300万円が消え、追証で約80万円。
合計の損失は380万円台になった。
画面の数字が、自分のものに見えなくなった瞬間があった。
M.Tさんはそのまま、5分動けなかったという。
翌朝、有給を申請した
やり取りの中で印象的だったのは、M.Tさんが翌朝の出社をしなかった話。会社に有給の連絡を入れて、1週間休んだ。理由は何も書かなかった。
妻には半年経ってから、ふとした夕食の席で打ち明けた。妻からの最初の返答は、「なぜすぐ言わなかったのか」だった。
M.Tさんは、それから1年半でFXをやめた。「画面を見ると、あの夜の数字が一瞬よぎる」のだという。
M.Tさんの体験から、整理できること
編集者注:以下はM.Tさん個人の体験から得られた視点の整理であり、当サイトからの投資助言・売買推奨ではありません。投資判断は読者ご自身の責任において行ってください。
- 指標発表時の流動性低下とスリッページの実態。発表時刻の前後数分は、板の厚みが消える時間帯。指定したロスカットレートと、実際の約定レートは別物として動く。
- ロスカットは「損を確定させる仕組み」ではない。正確には「損を確定できなくなる前に強制的に決済する仕組み」。指定レートと実約定レートの乖離は、ロスカットを浅く設定する以外で防ぐ手段がない。
- 深夜帯の判断と、睡眠不足の影響。残業帰りの30分という限られた時間でのトレードは、判断速度の点で平日昼間と等価ではない。