暗号資産

福井の20代会社員、Luna崩壊で180万円失った話

福井県の20代男性会社員Mさん(仮名)が、YouTubeで知ったLuna/USTに180万円を投じ、2022年5月の崩壊でほぼ全損。

属性25歳男性・福井県 損失額¥1,800,000-
約 6 分で読めます(2,705字)
目次
  1. YouTubeから
  2. 2022年初の購入
  3. 2022年5月のLuna崩壊
  4. 両親への告白
  5. 振り返り:3つの教訓
  6. 編集後記にかえて
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Mさん(仮名・25歳男性・福井県の繊維メーカー営業)から届いた話。YouTubeで知ったLunaで180万円を失った経緯を、本人の記憶をたどりながら整理した。

YouTubeから

2021年末、Mさんは「Lunaで億り人」というYouTube動画を見て興味を持った。当時は暗号資産全体が高値圏にあり、関連動画はどれも勢いがあった。再生数の多いサムネイルには、若い投資家が口座残高を見せながら笑っている画像が並んでいた。Mさんはもともと投資の経験がほとんどなく、繊維メーカーの営業として地道に働いて、独身で実家暮らし、年収は約380万円。コツコツ貯めたお金を「もっと増やせるのではないか」と考え始めていた時期だった。

その動画で繰り返し語られていたのが、Anchor Protocolで年利20%という訴求だった。銀行預金の金利がほぼゼロの環境で、年利20%という数字は強烈に響いた。Mさんは「これは見つけてしまった」という感覚を持ったという。動画のコメント欄にも、実際に利息を受け取っているという報告が並んでいて、それが安心材料に見えた。2022年1月、Mさんはこの仕組みに参入することを決めた。

2022年初の購入

Mさんはバイト含めて貯めていた130万円を最初の元手にした。それでも「もっと早く、もっと大きく増やしたい」という気持ちが膨らみ、消費者金融から50万円を借り入れ、計180万円分のUSTを購入してAnchorに預け入れた。最初の入金は約36万円で、深夜、家族が寝た後の自室から、おそるおそる操作したという。

預け入れた直後から、画面上の数字は毎日少しずつ増えていった。年利20%は日割りにすると小さな額だが、それでも確かに増えているという事実が、判断を後押しした。Mさんはこの時点で、自分の選択が正しかったと感じていた。利息がさらに利息を生むことを思えば、数年後にはまとまった金額になる。そんな計算を頭の中で何度も繰り返していた。借入金の50万円分も、利息でじゅうぶん返せると考えていた。

2022年5月のLuna崩壊

異変が起きたのは2022年5月だった。5月8日から12日にかけて、Lunaの価格が急落し、それに連動してUSTのペッグが外れていった。USTは本来1ドルに価格が固定されているはずのステーブルコインだったが、その「1ドル」が崩れ始めた。最初はわずかなズレに見えた。Mさんは「一時的なもので、すぐ戻る」と考えて様子を見た。

しかし下げは止まらなかった。価格を支える仕組みがLunaの発行で需給を調整する設計だったため、USTが売られるとLunaが大量に発行され、Lunaの価格がさらに下がり、それがまたUSTへの不安を呼ぶという連鎖に入った。数日のうちにLunaは事実上の無価値となり、USTのペッグは完全に崩壊した。Mさんが画面を開いたとき、180万円分あったはずの資産は99.9%減少していた。最終的に回収できた額は1万円程度だった。

下げ始めた局面で逃げる判断ができなかったのは、年利20%という入口の魅力がそのまま「戻るはずだ」という期待に変わっていたからだった。Mさんは当時を振り返って、価格が崩れていく数日間、ただ画面を見つめることしかできなかったと話している。

両親への告白

残ったのは、消費者金融からの50万円の借入だった。利息で返すつもりだったその元本が、返済の見込みが立たないまま手元に残った。Mさんは数日悩んだ末、両親に事情を話すことを決めた。父親と一緒に消費生活センターに行く、その前夜に、これまでの経緯を自分なりに整理して伝えたという。両親は借入を肩代わりしてくれた。Mさんは現在、月2万円ずつ実家に返済を続けている。

振り返り:3つの教訓

Mさんが自分の体験をどう捉えているか、本人の言葉を3点に整理した。

1. アルゴリズム型ステーブルコインは構造的にペッグ外れリスク

USTは、現金や国債のような裏付け資産を持つのではなく、別のコイン(Luna)との交換によって1ドルを保とうとする設計だった。この方式は、市場が落ち着いているうちは機能するが、ひとたび大きな売りが出ると、価格を支えるための発行がかえって価格を押し下げる方向に働く。崩れ始めると自分で自分を加速させてしまう構造で、そこに「絶対」という安全はなかった。Mさんは「ステーブル=安定という言葉を、中身を確かめずに信じていた」と話している。

2. 『年利20%』の数学的持続不可能性

銀行預金がほぼゼロ%の世界で、リスクの所在を説明できないまま年利20%が続くという前提そのものに無理があった。高い利回りには、その原資がどこから来ているのかという問いが必ず伴う。誰かが払い続けなければ成立しない利息は、その「誰か」がいなくなった瞬間に止まる。入口の数字が大きいほど、出口で何が起きるのかを確かめる必要があった、というのがMさんの実感だった。

3. 借入金を新興プロトコルに入れない

最も悔やんでいるのが、消費者金融から借りた50万円を投じたことだった。自分の貯金130万円だけなら、失っても生活は揺らがなかった。しかし借入を上乗せしたことで、資産が消えた後にも返済という現実が残った。利益を急いだ50万円が、崩壊後にいちばん重くのしかかった。Mさんは「増やすために借りた瞬間に、もう冷静ではなかった」と振り返っている。

編集後記にかえて

Mさんの話を聞いて見えてきたのは、判断のどこか一点が決定的に間違っていたというより、入口の「年利20%」という一つの数字が、その後のすべての判断の色を決めていたという構造だった。最初に大きな利回りを信じてしまうと、価格が崩れる局面でも「戻るはずだ」という期待として同じ数字が働き続ける。逃げ遅れの直接の原因は、入口の期待そのものだったように見える。

2022年5月のLuna・UST崩壊は、Mさん一人の特別な失敗ではなく、世界中の多くの参加者が同時に巻き込まれた出来事だった。日本でも、暗号資産取引所を通じて間接的に影響を受けた人を含めれば、被害は地方都市の若年層にまで広く及んでいる。YouTube動画の「億り人」という訴求は、投資の経験が浅い人ほど参入のハードルを下げてしまう。実家暮らしでコツコツ貯めた130万円が入口になり、そこに借入50万円が重なっていった流れは、特殊な人だけがはまる罠ではなかった。Mさんは現在、投資を完全に停止し、本業のスキルアップに集中しながら、自治体の消費者教育講座を受講している。この記録が、同じ入口の前に立っている誰かにとって、立ち止まる材料になればと思う。

LESSONS & CONSIDERATIONS

Mさんの体験から、整理できること

編集者注:以下はMさん個人の体験から整理した視点で、当サイトからの投資助言・売買推奨ではない。投資判断は読者本人の責任で。

A
REFLECTION

心理と反省ポイント

  • 上昇局面の「次の半値」は来る。逃げる速度は買う速度より遅い、と知っておく。
  • 出金完了するまでは「利益」ではない。取引所のホット枯渇・規制で凍結することがある。
  • 「お前にだけ教える」「上場前」「LINEグループで限定公開」は、ほぼ全部詐欺の入口。
B
PRACTICAL CHOICE

もう一度選び直すなら

失敗した道具・口座・サービスを今からどう選び直すか。
比較記事で軸を整理してから動くと、同じ罠を踏みにくい。

C
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